「故」という言葉の正しい使い方に迷ったことはありませんか?弔電やお悔やみの手紙で「故」をどう付けるか、誰に対して使うのかは意外と知らないものです。この記事を読むことで「故」の意味・使い方・マナーがすべてわかりますよ。ぜひ最後まで読んでください。
1.「故」の意味と基本的な使い方

「故」とはどういう意味か
「故(こ)」とは、すでに亡くなった人を指す接頭語です。
人名や肩書きの前に付けることで、「この人はすでに故人である」ということを相手に伝える役割を持ちます。
日常会話ではあまり使われませんが、弔電・訃報・葬儀案内・ビジネス文書など、改まった場面で非常によく使われる言葉です。
「故」の語源は漢語にあり、「古い・過去の・もとの」という意味を持ちます。
そこから転じて「亡くなった(=過去の人)」という意味で使われるようになりました。
現代日本語では、故人を敬う場面で自然に使われる丁寧な表現として定着しています。
「故人」「故〇〇」など「故」の付け方のルール
「故」の付け方には一定のルールがあります。
主な使い方のパターンは以下のとおりです。
- 「故人(こじん)」:亡くなった人を指す一般的な名詞。特定の人物を指さず使う。
- 「故〇〇氏」:男性の故人に氏名や苗字を付けて呼ぶ形式。例:「故山田太郎氏」
- 「故〇〇様」:敬意を込めた呼び方。弔電や手紙で多く使われる。
- 「故〇〇先生」「故〇〇会長」:肩書きと組み合わせた表現。
「故」は名前や肩書きの直前に付けるのが基本です。
「山田太郎故氏」のように後ろに付けるのは誤りですので注意してください。
また、フルネームに付ける場合は「故山田太郎氏」、苗字のみの場合は「故山田氏」のように使います。
「故」を使う場面・使わない場面の違い
「故」を使う場面と使わない場面を正しく理解しておくことは、社会人として非常に重要です。
「故」を使う場面
- 弔電・お悔やみの手紙
- 訃報・社内連絡
- 葬儀・法要の案内状
- 追悼文・年忌法要の案内
- 会社の公式文書
「故」を使わない(または使いにくい)場面
- 日常の口頭での会話(「亡くなった〇〇さん」と言うのが自然)
- 親しい間柄での非公式のやり取り
- 故人が亡くなってから時間が経ちすぎている歴史上の人物(「故徳川家康氏」とは言わない)
歴史上の偉人や著名人には通常「故」を付けません。
「故」は比較的近い時代・近い関係の人に使うのが一般的です。
「故」と「亡き」「亡」の使い分け
「故」「亡き」「亡(ぼう)」はいずれも亡くなった人を指す言葉ですが、ニュアンスや使い方が異なります。
| 表現 | 読み方 | ニュアンス・使われ方 |
|---|---|---|
| 故 | こ | 改まった文書・公式場面で使う接頭語。客観的・敬称的。 |
| 亡き | なき | 感情・追慕の気持ちが込もった表現。「亡き父」「亡き恩師」など。 |
| 亡 | ぼう | 「亡父(ぼうふ)」「亡母(ぼうぼ)」など、自分の親族に使う漢語的表現。 |
フォーマルな文書には「故」、感情や追慕を込めたいときは「亡き」、自分の親族(特に両親)を指すときは「亡父・亡母」と使い分けると自然です。
2.「故」を使った正しい敬語表現と文例

弔電・お悔やみ状での「故」の使い方
弔電やお悔やみ状では、「故」を付けた表現が正式なマナーとして求められます。
弔電の文例
故山田太郎様のご逝去の報に接し、謹んでお悔やみ申し上げます。
故田中花子様の突然のご訃報に、深く哀悼の意を表します。
ポイントは以下のとおりです。
- 「故〇〇様」と敬称「様」を必ず付けるのが基本。
- 「ご逝去」「ご訃報」など、死を直接的に表す言葉を避けた敬語表現と合わせて使う。
- 弔電では「死亡」「死ぬ」などの直接表現はタブーであり、「ご逝去」「他界」「永眠」などを使う。
お悔やみ状では、冒頭に「故〇〇様のご訃報に接し」と書き出すのが定番です。
葬儀・法要の案内状における「故」の書き方
葬儀や法要の案内状でも「故」は欠かせない表現です。
葬儀案内状の文例
故山田太郎儀、去る〇月〇日に永眠いたしました。
生前のご厚誼に深く感謝申し上げます。
法要案内状の文例
故山田太郎の三回忌法要を下記のとおり執り行います。
案内状での注意点
- 葬儀案内では、故人の名前の後に「儀(ぎ)」を付ける書き方がよく使われます(「故山田太郎儀」)。
- 「儀」は「〇〇に関して」という意味を持つ改まった表現です。
- 法要案内では「儀」を省いてシンプルに書くケースもあります。
ビジネス文書・メールでの「故」の正しい使い方
ビジネスシーンでは、取引先や役員の訃報を社内外に伝える場面で「故」が使われます。
社外向けメールの文例
弊社代表取締役会長・故山田一郎が〇月〇日に逝去いたしました。
生前は格別のご厚誼を賜り、厚く御礼申し上げます。
社内向け訃報の文例
このたび、故田中部長(元営業部長)が〇月〇日に永眠されました。
在職中のご功績を偲び、謹んでお知らせいたします。
ビジネス文書での重要ポイント
- 「故」の後に肩書きを付ける場合は、「故山田一郎代表取締役会長」のように「故」を最前に置く。
- メールの件名には「訃報のお知らせ」と明記し、本文冒頭で「故〇〇」と書き始めると伝わりやすい。
- 過度に感情的な表現は避け、簡潔・丁寧にまとめることがビジネスマナーです。
口頭(会話)で「故」を使うときの注意点
「故」は書き言葉として定着した表現であり、口頭(話し言葉)では多少不自然に聞こえる場合があります。
口頭での自然な言い換え例を覚えておくと便利です。
| 書き言葉 | 話し言葉での自然な表現 |
|---|---|
| 故山田氏 | 亡くなられた山田さん・山田さん(故人) |
| 故人 | お亡くなりになった方・亡き方 |
| 故〇〇先生 | 亡き〇〇先生・以前お世話になった〇〇先生(故人) |
改まったスピーチや追悼の挨拶では「故〇〇様」と口頭で使うこともあります。
その場合は、「こ・やまだ・たろうさん」とはっきり発音し、聞き手に伝わるよう配慮することが大切です。
3.「故」の使い方でよくある間違いとマナー

存命中の人に「故」を使ってしまうNG例
「故」を存命中の人に使うことは、非常に失礼な誤りです。
実際にこのようなミスが起きる原因としては、以下のようなケースが挙げられます。
- 文書の使い回し(過去に作成した弔電文をそのまま転用してしまった)
- 「故〇〇会長」と書くべき場面で、現在の会長の名前を誤って入れてしまった
- 複数の人物を記載する際に、故人と存命者を混在させてしまった
このようなミスは、相手に多大な不快感や不信感を与えます。
文書を作成・送付する前には必ず確認し、存命者に「故」が付いていないかチェックする習慣をつけましょう。
「故」を付ける対象の範囲(家族・恩師・著名人など)
「故」は誰に対しても使えるわけではありません。
一般的に「故」を使う対象
- 自分の家族・親族(故父、故母、故祖父など)
- 恩師・上司・先輩
- 取引先・顧客の関係者
- 社会的に知られた人物(経営者、政治家、文化人など)
「故」を使わないケース
- 歴史上の人物(故徳川家康、故聖徳太子などとは言わない)
- 自分よりも目上でない場合でも状況次第
また、自分自身の家族について第三者に伝える場合は、「亡父(ぼうふ)」「亡母(ぼうぼ)」「亡祖父(ぼうそふ)」などの表現を使うのが日本語として自然です。
「故父」という表現は誤りではありませんが、「亡父」の方がより一般的に使われます。
「故」と「元」を混同しやすいケースと判断基準
「故〇〇会長」と「元〇〇会長」は混同しやすい表現です。
| 表現 | 意味 | 使用例 |
|---|---|---|
| 故〇〇会長 | すでに亡くなっている元会長 | 故山田一郎会長 |
| 元〇〇会長 | 現在は会長職ではないが存命の人物 | 元山田一郎会長 |
判断基準はシンプルで、「亡くなっているかどうか」です。
- 亡くなっている → 「故」
- 存命だが退任・退職している → 「元」または「前」
ビジネス文書や訃報で「元」と「故」を間違えると、相手に誤解を与えるだけでなく、存命の人に対して大変失礼になります。
作成前に必ず対象者の生存確認を行うことを徹底しましょう。
4.シーン別「故」の使い方具体例

年賀状・喪中はがきでの「故」の書き方
喪中はがきは、身内が亡くなったことを伝えながら年賀状を遠慮する旨を知らせるものです。
この喪中はがきの中でも「故」が自然に使われます。
喪中はがきの文例
喪中につき年末年始のご挨拶をご遠慮申し上げます。
本年〇月に故父・山田一郎が〇〇歳にて永眠いたしました。
ポイント
- 喪中はがきでは「故父」「故母」「故祖父」のように続柄と合わせて書く。
- 享年(きょうねん)や年齢を添えると丁寧な印象になる。
- 「死亡」「死去」などの直接表現は避け、「永眠」「他界」「逝去」を使う。
- 喪中はがきは11月中旬〜12月初旬に届くよう送るのがマナー。
会社の訃報メール・社内連絡での使用例
会社内での訃報連絡は、速やかかつ正確に行う必要があります。
社内訃報メールの文例
件名:【訃報】元営業部長 故田中次郎氏 逝去のお知らせ
社員各位
このたび、弊社元営業部長の故田中次郎氏が〇月〇日に享年〇〇歳にてご逝去されました。
生前のご功績を偲び、謹んでご冥福をお祈り申し上げます。なお、ご葬儀は下記のとおり執り行われます。
社外向け訃報メールの文例
平素より格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、このたび弊社代表取締役社長・故山田太郎が〇月〇日に逝去いたしました。
生前に賜りましたご厚誼に深く感謝申し上げます。
訃報メールでは件名に「訃報」または「逝去のお知らせ」と明記し、故人の名前・役職・逝去日を冒頭に明確に記載することが重要です。
SNSや現代のデジタル媒体での「故」の使用傾向と注意点
近年、SNSやWebメディアでも故人について言及する機会が増えています。
SNSでの「故」の使用傾向
- 著名人が亡くなった際に「故〇〇さん」と投稿するユーザーが増加している。
- ニュース記事やWebメディアでも「故〇〇氏」という表記が標準的に使われる。
- 追悼投稿では「#故〇〇」のようなハッシュタグが使われることもある。
デジタル媒体で「故」を使う際の注意点
- 誤情報に注意:存命の人物に誤って「故」を付けた投稿は拡散されると取り消しが難しい。
- SNSは速報性が高いため、訃報の真偽を公式情報で確認してから投稿する。
- カジュアルな場面での「故」の多用は、逆に不自然・不謹慎に見えることもある。
- 公式アカウントや企業のSNSでは、丁寧かつ正確な表現を心がけることが信頼感につながる。
これは従来の書き言葉としての「故」が、デジタル化によって新しい場面に広がりつつあることを示しており、現代における「故」の使い方を考える上で重要な視点です。
まとめ
- 「故」は亡くなった人の名前・肩書きの前に付ける接頭語で、改まった場面で使う。
- 「故〇〇様」「故〇〇氏」のように、名前や肩書きの直前に付けるのが正しい使い方。
- 歴史上の人物や日常会話には使わないのが一般的なマナー。
- 「亡き」は感情・追慕、「亡父・亡母」は自分の親族に対する表現として使い分ける。
- 弔電・葬儀案内・ビジネス文書では「故〇〇様」「故〇〇儀」などの定型表現を活用する。
- 存命中の人に「故」を使うのは厳禁。文書作成前に必ず確認する。
- 「故〇〇会長」(亡くなっている)と「元〇〇会長」(存命・退任)を混同しない。
- 喪中はがきでは「故父」「故母」のように続柄と組み合わせて使う。
- 訃報メールは件名に「訃報」と明記し、故人の名前・役職・逝去日を冒頭に書く。
- SNSでの使用は誤情報に注意し、公式情報を確認してから投稿する。
「故」という一字には、故人への敬意と追悼の気持ちが込められています。
正しい使い方を身につけることで、大切な場面でも自信を持って言葉を選べるようになります。
いざというとき、この記事がお役に立てれば幸いです。
関連サイト
文化庁 国語施策・日本語教育