あなたは「ヤモリの尻尾が切れてしまった」と驚いたことはありませんか?結論、ヤモリの尻尾が切れるのは身を守るための防衛本能です。この記事を読むことでヤモリの尻尾が切れる理由や再生の仕組み、何度も生え変わるのかがわかるようになりますよ。ぜひ最後まで読んでください。
Contents
1.ヤモリの尻尾が切れる理由とは?

外敵から逃げるための防衛本能
ヤモリが尻尾を切る現象は「自切(じせつ)」と呼ばれ、外敵から身を守るための重要な生存戦略です。
ヘビや鳥、猫などの捕食者に襲われた際、ヤモリは自分の意思とは関係なく反射的に尻尾を切り離します。
これは長い進化の過程で獲得した防衛本能であり、尻尾を犠牲にすることで本体の命を守ることができるのです。
切り離された尻尾が動き続けることで捕食者の注意をそらし、その隙にヤモリ本体は安全な場所へと逃げることができます。
ストレスや恐怖で反射的に切れる仕組み
ヤモリの自切は意図的な行動ではなく、強いストレスや恐怖を感じた瞬間に自動的に発動する反射行動です。
飼育下のヤモリでも急に驚かされたり、強く掴まれたりすると反射的に尻尾を切ることがあります。
ヤモリは「今、尻尾を切ろう」と考えているわけではなく、危険を感じた瞬間に自然と尻尾が切れてしまうのです。
この仕組みは尻尾の骨格構造に秘密があり、尾椎(びつい)という小さな骨がいくつも連なってできています。
それぞれの尾椎の中央部には「脱離節(だつりせつ)」という切れ目が存在し、ストレスがかかると脱離節の周りの筋肉がキュっと力を入れ、尻尾が切り離される仕組みになっています。
切れた尻尾が動き続ける驚きのメカニズム
切り離されたヤモリの尻尾は、しばらくの間ピクピクと動き続けます。
この驚くべき現象は、尻尾に「中枢パターン発生器」と呼ばれる神経回路網が備わっているためです。
脳からの信号がなくても一定のリズムで筋肉を動かすことができ、切断後も10分程度は自律的に動き続けます。
しかも尻尾の動きは単純ではなく、周囲の刺激に反応して複雑に変化するため、まるで生きているかのように見えます。
左右にばたついたかと思えば、ジャンプして向きを変えたりと予測不能な動きをすることで、捕食者の注意を効果的に引きつけることができるのです。
血が出ないのはなぜ?自切の身体構造
ヤモリの尻尾が切れても大量の血が出ないのは、自切に特化した身体構造を持っているためです。
脱離節で切れた瞬間、切断面の筋肉が素早く収縮して血管を締め付け、出血を最小限に抑えます。
元々切れ目になっている構造に加え、血管の内側にある弁が血液の流れを遮断するため、ほとんど出血しません。
また切断面には特殊な組織が形成されており、傷口を素早く塞ぐ働きをしています。
この仕組みにより、ヤモリは命に関わるような大きなダメージを負うことなく、細菌感染のリスクも抑えられます。
2.ヤモリの尻尾は再生する?かかる期間と過程

尻尾の再生にかかる期間は1ヶ月〜数ヶ月
ヤモリの切れた尻尾は時間をかけて再生しますが、再生には通常1ヶ月から数ヶ月の期間が必要です。
再生期間はヤモリの種類や健康状態、栄養状態によって大きく異なります。
若く健康なヤモリほど再生が早く、栄養が十分でないと再生が遅れたり不完全になったりする可能性があります。
飼育下のヤモリの場合、再生期間中は十分な栄養と清潔な環境を提供することで再生を助けることができます。
再生の過程と断面の変化
ヤモリの尻尾が再生する過程は段階的に進んでいきます。
自切から3週間後ほどで、尻尾の先端に半透明の突起物が出現します。
約1ヶ月後には突起物に色がつき始め、長さも少しずつ伸びていきます。
2ヶ月ほど経つと突起物の色が体の色になじんできて、完全な尻尾の形に近づいていきます。
再生の過程では切断面がむき出しになった筋肉部分に「再生芽」があり、この再生芽が徐々に伸長して新たな尻尾となります。
再生した尻尾は元に戻る?形や色の違い
残念ながら、再生した尻尾は元の尻尾と全く同じ状態には戻りません。
再生された尻尾は通常、色が薄く、短くて太い形状をしており、元の尻尾とは見た目が異なります。
色や模様も変わることが多く、よく見ると途中から色が変わっていることがわかります。
再生した尻尾は元の尻尾よりも短くいびつな形になることが多く、外見も大きく変わるのです。
骨は再生しない!軟骨で形成される理由
再生した尻尾が元通りにならない最大の理由は、骨が完全に再生されず、軟骨で形成されるためです。
元の尻尾には尾骨という硬い骨がきちんとできていますが、自切で尾骨も一緒に切れてなくなってしまいます。
再生過程で元の尾骨が完全には復元されず、代わりに軟骨で尻尾が作られます。
軟骨は骨に比べて柔軟性があり機械的強度が低いため、長く細い形を維持するのが難しくなります。
そのため再生された尻尾は元の尻尾に比べて支える機能が低下し、太くて短くいびつな形になってしまうのです。
3.ヤモリの尻尾は何度も生え変わるのか?

自切は基本的に一生で1回だけ
多くの人が誤解していますが、ヤモリの自切は基本的に一生で1回きりです。
二度目の自切ができないのは、再生された尻尾の構造が元の尻尾とは根本的に異なるためです。
再生した尻尾には元通りの骨は形成されず、脱離節のない1本の軟骨だけが生成されます。
つまり自切は生涯で一度きりの、まさに捨て身の行動なのです。
ただし例外的に、自切する際に切り離さなかった部分に脱離節が残っていれば、そこからもう一度自切することはあります。
脱離節が再生されない仕組み
ヤモリの尻尾が一度しか自切できない理由は、再生過程で脱離節という切れ目の構造が再形成されないからです。
元の尻尾には尾椎のいくつもの部分に脱離節があり、これが自切を可能にしていました。
しかし自切が起きると尻尾の内部の小さな骨が含まれる部分が断ち切られ、失われてしまいます。
新しく再生された尻尾には自切を可能にする構造(脱離節)が含まれていないため、二度と自切を行うことはできません。
再生された尻尾は元の尻尾よりも短く形状もいびつであり、機能的にも完全な再生は難しいのです。
再生しないケースもある!年齢と栄養状態の影響
ヤモリの尻尾は再生能力が高いことで知られていますが、必ず再生するとは限りません。
再生しない原因の一つは、自切の回数が多すぎることです。
ヤモリは何度でも尻尾を再生できるわけではなく、一生のうちに再生できる回数には限りがあると考えられています。
自切を繰り返すたびに再生能力は低下していき、ついには再生できなくなってしまうのです。
また再生能力の低下はヤモリの年齢とも関係しており、若いヤモリは再生能力が高く何度も再生を繰り返せますが、年をとるにつれて再生能力は徐々に衰えていきます。
さらに再生の過程で必要な栄養が不足していると、再生が遅れたり不完全に終わる可能性があります。
4.飼育中のヤモリの尻尾が切れたときの対処法

尻尾が切れる原因と予防策
飼育中のヤモリが自切してしまう主な原因は、ストレスや恐怖による反射的な行動です。
急に驚かされたり、強く掴まれたり、無理にハンドリングしたりすると自切してしまうことがあります。
予防策としては、ヤモリを扱う際には慎重にゆっくりと接し、必要以上に触らないことが重要です。
飼育環境も重要で、隠れ家を十分に用意し、静かで落ち着いた環境を保つことでストレスを軽減できます。
また飼育ケージの扉を閉める際に尻尾が挟まったり、レイアウトの隙間に尻尾が引っかかったりしないよう注意が必要です。
切れた後の飼育環境の整え方
ヤモリが自切してしまった場合、基本的に特別な処置は必要ありません。
脱離節で切れているため、切断面の筋肉がすぐに収縮して出血を防ぎ、傷口は自然に塞がります。
下手に消毒などすると再生に影響する可能性があるため、触らずに自然治癒に任せるのが最善です。
ただし細菌感染を防ぐために、土系の床材を使っている場合は傷口が塞がるまで新聞紙やペットシーツに変更すると良いでしょう。
飼育環境を清潔に保ち、ストレスを与えないよう静かに見守ることが大切です。
栄養補給と温度管理のポイント
尻尾を自切したヤモリは一気に栄養を失ってしまうため、十分な栄養補給が必要です。
特にヒョウモントカゲモドキ(レオパ)など尻尾が太いタイプのヤモリは、尻尾に脂肪や栄養分を蓄えていることが多く注意が必要です。
自切後は普段よりも高温で飼育し、たくさん餌を食べさせることで体力の回復と再生を促進できます。
尻尾の再生には体力とエネルギーが必要なため、栄養価の高い餌を十分に与えましょう。
野生のヤモリは栄養を取り戻すために、切り離した尻尾を食べることもあります。
ヤモリとトカゲ・イモリの尻尾の違い
ヤモリと似た生き物であるトカゲやイモリも尻尾に関する特徴を持っていますが、それぞれ違いがあります。
トカゲもヤモリと同じように自切を行い、再生の仕方もヤモリと同じで尾骨は再形成されずに軟骨で形成されます。
ただしトカゲの全てが尻尾を切るわけではなく、アガマの仲間(フトアゴヒゲトカゲなど)、イグアナの仲間、カメレオンの仲間、オオトカゲの仲間は自切しません。
一方、イモリはヤモリやトカゲと違って両生類に分類され、自ら尻尾を切ることはありませんが、尻尾を失っても完全に骨まで再生します。
ヤモリの中でもクレステッドゲッコーなどミカドヤモリの仲間は、自切はするけれど再生しない場合があるため、種類によって違いがあることを理解しておく必要があります。
まとめ
この記事で分かったポイントをまとめます。
- ヤモリの尻尾が切れるのは外敵から逃げるための防衛本能である
- 自切は反射的な行動で、ヤモリの意思とは関係なく発動する
- 切れた尻尾は中枢パターン発生器という神経系により10分程度動き続ける
- 脱離節という切れ目の構造と筋肉の収縮により出血はほとんどない
- 尻尾の再生には1ヶ月から数ヶ月かかり、個体差がある
- 再生した尻尾は軟骨で形成されるため、元の形や色とは異なる
- 自切は基本的に一生で1回だけで、脱離節が再生されないため
- 年齢や栄養状態により再生しないケースもある
- 飼育中は急に驚かせたり強く掴んだりしないことが予防策となる
- 自切後は床材を清潔なものに変え、十分な栄養補給と適切な温度管理が重要
ヤモリの尻尾の自切と再生は、長い進化の過程で獲得した驚くべき生存戦略です。飼育している方は、ヤモリにストレスを与えないよう優しく接してあげてください。
関連サイト: 国立研究開発法人 科学技術振興機構