あなたは「身を翻す」という言葉を正しく理解していますか?
結論、「身を翻す」は体の向きを素早く変える動作や、態度を急変させることを意味する言葉です。
この記事を読むことで「身を翻す」の正確な意味や使い方、類語との違いがわかるようになりますよ。ぜひ最後まで読んでください。
Contents
1.「身を翻す」の基本的な意味

「身を翻す」の読み方
「身を翻す」は「みをひるがえす」と読みます。
「翻す」という漢字は「ひるがえす」と読み、「翻訳(ほんやく)」などでも使われる文字ですが、一文字だけで見ると読み方が難しい漢字の一つです。
日常会話ではあまり使われない表現ですが、小説や文学作品ではよく目にする言葉なので、正しい読み方を覚えておくと役立ちます。
辞書における定義
「身を翻す」には主に2つの意味があります。
一つ目は、体の向きを素早く変えるという物理的な動作を表す意味です。
精選版日本国語大辞典によれば、「からだの向きを素早く変える」と定義されており、身体を軽やかに回転させたり、進行方向を変えたりする動きを指します。
二つ目は、それまでの態度や方針を急に変えるという比喩的な意味です。
固辞していた態度を一変させたり、約束や言動を急に変えたりする場合にも使われる表現となっています。
言葉の由来と歴史
「身を翻す」という表現は古くから日本語で使われてきた言葉です。
最も古い使用例は1386年の「塩山和泥合水集」に見られます。
「金毛の獅子は身を翻へすことを解す」という文章で使われており、すでに中世の時代から動物や人間の素早い動作を表現する言葉として定着していたことがわかります。
また、明治時代の幸田露伴の小説「五重塔」(1891-92年)でも「身を翻(ヒルガ)へして退く機(はずみ)に足を突込む道具箱」という形で使用されており、文学作品で頻繁に用いられてきた表現です。
時代を超えて使い続けられてきた美しい日本語表現の一つと言えるでしょう。
2.「身を翻す」の具体的な使い方

身体の動きを表す場面での使い方
身体の動きを表す場合、素早く向きを変える動作を描写する際に使います。
例えば、危険を回避する場面では「車が突然飛び出してきたので、咄嗟に身を翻して避けた」というように使用できます。
舞踊や格闘技の場面でも効果的に使える表現です。
「お囃子にあわせて踊り手がくるりと身を翻す」「相手の攻撃をかわすように身を翻して反撃に出た」などの使い方ができます。
動物の動きを描写する際にも適した言葉で、「イルカはくるりと身を翻すと波間に消えた」といった表現は自然で美しい日本語となります。
態度や方針を変える意味での使い方
態度や方針を急に変える場面でも「身を翻す」は使用できます。
ただし、この用法は物理的な動作よりもやや比喩的な意味合いが強くなります。
例えば、「彼は私の提案を拒否していたが、条件を提示すると身を翻して賛成した」というように使えます。
また、立ち去る場面でも使用され、「『もう結構です』と言い残し、彼女は身を翻して部屋を出て行った」といった表現が可能です。
この場合、単に方向を変えるだけでなく、決然とした態度や感情の変化も含まれているニュアンスがあります。
文学作品での使用例
文学作品では「身を翻す」は情景描写を豊かにする表現として頻繁に使われます。
森見登美彦の「夜は短し歩けよ乙女」では「彼女の手を引いて身を翻すと、私は咆哮する竜巻の手を逃れようとした」という文章があります。
辻井喬の作品でも「葉は引力に抵抗しているように、向きを変え、身を翻しながら落ちてゆく」という美しい表現で使われています。
このように、動きに躍動感や緊張感を与える効果があるため、小説や物語で好んで使用される言葉です。
読者に視覚的なイメージを鮮明に伝えることができる優れた表現技法となっています。
日常会話での使い方
日常会話では「身を翻す」はあまり頻繁には使われません。
やや文語的で格調高い表現であるため、カジュアルな会話よりも改まった場面や書き言葉で使用されることが多い言葉です。
しかし、使えないわけではなく、「彼は僕の手を振り払うと、身を翻して向こうに行ってしまった」といった形で会話の中でも使用可能です。
日常会話で使う場合は、「振り返る」「向きを変える」「くるりと回る」などの平易な表現に置き換えることもできます。
ただし、状況に応じて「身を翻す」を使うことで、より印象的で洗練された表現になることもあるでしょう。
3.「身を翻す」の類語・言い換え表現

身をさっと反転させる
「身をさっと反転させる」は「身を翻す」とほぼ同じ意味を持つ類語表現です。
身体の方向や向きを変える、身体を反対の方向に向けるという解釈ができます。
「隣のいたずら小僧が石を投げつけてきたので、身をさっと反転させてかわした」というような使い方ができます。
「反転させる」という言葉を使うことで、より具体的に180度方向を変える動作を表現できます。
「身を翻す」よりもやや説明的な表現になりますが、意味は明確に伝わりやすい言い換えと言えるでしょう。
身体の向きを素早く変える
「身体の向きを素早く変える」も「身を翻す」と同義の表現です。
格闘技やスポーツの世界でよく使われる言葉で、敵の攻撃を避けるように素早く態勢を変える場合に使用されます。
「相手の敵をかわすように身体の向きを素早く変えて反撃に出た」という場面で効果的に使えます。
この表現は「身を翻す」よりも直接的で、動作の速さを強調する効果があります。
スポーツ実況やトレーニング指導などの場面では、こちらの表現の方が一般的に使われることが多いでしょう。
方向転換する
「方向転換する」は「身を翻す」のより平易な言い換え表現です。
進行方向を変えることを意味し、身体の動きだけでなく、車や船などの乗り物にも使える汎用性の高い言葉です。
「危険を察知して急いで方向転換した」というように使用できます。
「身を翻す」が持つ文学的な雰囲気や躍動感は薄れますが、日常会話や業務連絡などでは使いやすい表現となっています。
ビジネスシーンでは「方針を方向転換する」というように、比喩的な意味でも頻繁に使われる言葉です。
態度を急変させる
「態度を急変させる」は「身を翻す」の比喩的な意味を言い換えた表現です。
それまでの立場や考え方を突然変えることを意味し、「彼は反対していた立場から態度を急変させて賛成に回った」というように使います。
「手のひらを返す」という慣用句とも近い意味を持つ表現です。
物理的な動作ではなく、心理的・精神的な変化を表す場合に適した言い換えとなります。
ビジネスや政治の場面では「態度を急変させる」の方が「身を翻す」よりも一般的に使われることが多いでしょう。
4.「身を翻す」を使った例文集

動作を表す例文
身体の動きを表現する例文を紹介します。
- 突然の銃声に驚き、彼は身を翻して茂みの中に隠れた
- 猫が身を翻して窓から外へ飛び出していった
- ダンサーは音楽に合わせて優雅に身を翻した
- 剣士は敵の攻撃を身を翻してかわし、反撃の機会をうかがった
- 落ち葉が風に舞い、身を翻しながら地面に落ちていく
これらの例文では、素早い動作や華麗な動きが表現されています。
いずれも視覚的にイメージしやすい場面で「身を翻す」が効果的に使われています。
心情の変化を表す例文
態度や方針の変化を表現する例文を見てみましょう。
- 「ごめん」と一言残し、彼女は身を翻して走り去った
- 交渉が決裂したと悟ると、彼は身を翻して会議室を後にした
- 彼は私の申し出を一度は断ったが、条件を聞くと身を翻して承諾した
- 激怒した彼は身を翻して部屋を飛び出していった
- 侮辱されたと感じた彼女は、身を翻してその場を立ち去った
これらの例文では感情の動きや決意が「身を翻す」という動作に表れています。
単なる方向転換ではなく、心理的な変化も同時に表現できているのが特徴です。
小説や物語での使用例
文学作品で実際に使われた例文を紹介します。
- 「葉は引力に抵抗しているように、向きを変え、身を翻しながら落ちてゆく」(辻井喬)
- 「彼女の手を引いて身を翻すと、私は咆哮する竜巻の手を逃れようとした」(森見登美彦「夜は短し歩けよ乙女」)
- 「身を翻して退く機に足を突込む道具箱」(幸田露伴「五重塔」)
文学作品では「身を翻す」が情景描写や心理描写を豊かにする役割を果たしています。
単純な言葉の置き換えでは表現できない、独特の文学的な雰囲気を醸し出すことができる表現です。
まとめ
- 「身を翻す」は「みをひるがえす」と読み、体の向きを素早く変える動作を表す
- 物理的な動作だけでなく、態度や方針を急変させる比喩的な意味もある
- 中世から使われてきた歴史ある日本語表現である
- 文学作品では情景描写を豊かにする効果的な表現として頻繁に使われる
- 類語には「身をさっと反転させる」「身体の向きを素早く変える」などがある
- 日常会話よりも書き言葉や改まった場面で使われることが多い
- 危険回避、舞踊、格闘技などの場面で特に効果的に使える
- 感情の変化や決意を表現する際にも使用できる
- 視覚的イメージを鮮明に伝えられる優れた日本語表現である
「身を翻す」は美しく格調高い日本語表現です。
適切な場面で使いこなすことで、あなたの文章表現力や語彙力がより豊かになるでしょう。
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